クマバチのオスは刺さないことで知られていますが、どうして刺さないのかその理由をご存知でしょうか。実際にハチによる被害として「スズメバチに刺された」というニュースは毎年耳にしますが、文字通り熊のようにずんぐりとしハチに刺されたニュースは聞いた事がありません。
害虫であるスズメバチと比べればクマバチの害はそれほどはなく、見た目も可愛い熊蜂ですがその重い羽音は聞いているだけで怖くなります。しかし、あのクマバチの羽音は、オスが毒針を出さない理由と密接に関わっているのが実際のところです。この記事を読むと、クマバチのオスが刺さない衝撃的な理由がわかります。
クマバチのオスが刺さない根本的な理由
クマバチのオスが人間を刺さない理由、それは雄が毒針を持っていないからです。そのため、クマバチの独特なあの重苦しい羽音を出して人間を含めた動物を怖がらせ、強い事をアピールしています。そんなクマンバチのオスであっても万が一、捕まったり危機を感じると毒針を持っていないけれど針を出すような動きをするのが特徴的です。
この動きもまた、羽音と同様にクマンバチのオスが「自分は危険な存在だ」とアピールして自分の命を守ろうとしています。そもそもな話、ハチの毒針はメスしか持たない強烈な武器です。
害虫として有名なスズメバチでさえもアナフィラキシーショックをもたらす毒針を持っているのは、女王蜂と働き蜂に限られています。では女王蜂ならともかく、スズメバチの働き蜂はオスとメスの性別に関係なく飛んでいるのかと言えばそうではないということをご存知でしょうか。
実は、スズメバチの働き蜂は全てメスしかいません。スズメバチのオスは基本的にその多くの時間を巣の中で過ごし、繁殖期になったら外に出た女王蜂を追いかけて交配に勤しみます。その後は交配の成否に問わず、役目を終えらその生涯は終わりです。
交配に成功すればその場で、交配が上手くいかなければ巣を追い出されて餌の取り方も分からないままその命を費やします。何故メスにしか毒針を持っていないのか、それは毒針の正体が産卵管を硬質にしたものだからです。
産卵管とは文字通り卵を産むための管状の器官で、オスのクマバチは、メスの持つ産卵管のかわりに交配器を持っています。人間で当てはめると子宮と精巣というわけです。
そのため、クマバチのオスは刺さないのではなくて物理的に刺せません。おかげで元来クマバチが大人しいと言われている性格に拍車をかけており、素手で捕まえられるほどクマンバチのオスは無害だと評価されています。
そんなクマバチのオスは毒針などの武器も持たないのに外でよく見かけるのは、ひとえにクマバチが花蜂の仲間に分類されているからです。花蜂とは花の蜜や花粉を主食にしているハチの一種で、ミツバチも花蜂の仲間に分類されています。
こうしたハナ蜂たちは、農業者には有難い存在です。林檎など植物によっては花粉の受粉をしなくてはならないものの、花蜂がいればその媒介をしてくれるので助かっていると言われています。
ちなみにクマバチはその強く発達したアゴと太い口を活かして花の根元に穴を開け、蜜を取る事から盗蜜という別名を持っているのが特徴的です。いずれにしても外敵を刺せない以上、羽音や素振りで「自分は強い」とアピールする蜂は見ていて心が和むと言えます。
クマバチのオスは刺さないけど活発になる時期について
クマバチのオスは刺さないハチであるものの、メスを探して活発になれば少々厄介な存在となります。クマバチのオスはメスを求める時期になると、空中の定位置でずっとホバリングをしてメスが来るのを待ち、自分の縄張りへ動くものがやってきたらそれを追いかける習性を持っています。
そして、オスのクマバチがメスを運良く見つけると、そのまま交配へと進むわけですが、厄介なところはそのホバリングをしている際に、自分の縄張りにやって来た生き物全てがメスであるかどうかを確かめるために追いかける習性がありあます。
もちろんクマバチのオスの縄張りから走り去れば追いかけるのを止めますし、そもそも熊蜂のオスは毒針を刺せない昆虫なので危害はありません。しかし、あの独特なクマバチのオスの羽音が近づき、肌に止まる事を想像すると本能的な恐怖や嫌悪はあります。
実のところ、オスのクマバチが動くものを見つけたら手当たり次第に追いかける習性は、メスであるかどうかの確認もありますが自分の縄張りに侵入した生き物を追い出すための行動でもあります。
この時の注意点を挙げるならクマバチのオスがホバリング、すなわち約2mの高さで空中停止していたらその近くを通りかかると追いかけられると判断して間違いありません。
そんなクマバチのオスが活発になる時期は、春です。特に、藤の花が咲く5月あたりが最もクマバチのオスが活発になる傾向にあります。元々、クマバチは藤の花を好むところがあり、藤の仲間に分類される花の蜜も好んで口にするものです。
また、メスのクマバチであれば4月から子育てのために花の蜜を集めており、活動的になっています。余談ですがメスのクマバチの行動は4月から6月まで体力や子育てのために花の蜜を集めて7月に1度目の子供達が羽化させますが、8月に2度目の子育ての準備をするのが特徴的です。
2度目のクマバチの子供達は10月頃に羽化するものの、その後すぐにやってくる冬の時期を安全に過ごすためにそのまま巣の中で春が来るのを待ちます。いずれにしてもメスのクマバチは、忙しいというわけです。
逆に言えば、空中でホバリングしているクマバチは基本的にオスしかいないと断言できます。あくまでオスのクマバチがホバリングをするのは、求愛相手のメスを探しているだけであり、また自分の縄張りを守るために追いかけて侵入を防いでいるので害はありません。
クマバチが活発になる具体的な時期は早くても3月、遅くても6月上旬までだとされています。ちなみに羽音で勘違いされるスズメバチに遭遇した際はただ走って逃げては刺激するだけなので、スズメバチを刺激せず低い姿勢になってゆっくりと離れる必要があります。距離は、10m以上であるのが理想的です。
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